中国へ輸出するための基礎知識〜注目を集める中国の越境EC〜

中国B2C市場に魅力を感じているあなたに、輸出ビジネスのトレンドと成功のポイントをご紹介します。

上海

景気低迷や米中貿易戦争、長引くコロナ禍、ウクライナ情勢。中国への販路拡大に興味はあるけれど、今の中国や世界の状況を考えると不安要素も多い…。

10億を超える人口を抱え、今や世界第2位の経済大国と呼ばれるまでになった中国。そこはまさしくトップクラスのマーケットと言えるでしょう。 とはいえ、この状況下で中国への進出はどうなのだろう、と考えあぐねている方も多いのではないでしょうか?

今、中国市場におけるECビジネスは、次なるステージに向かっています。

  • B2C市場をけん引する顧客層は?
  • コロナ禍が引き起こした消費者行動の変化とは?
  • 中国越境ECにはどんなビジネスモデルがあるの?

中国B2C市場の特徴をしっかりと捉え、越境ECにチャレンジしましょう。中国マーケットにはまだまだチャンスの芽が隠れています。

中国への輸出ビジネス最新情報

中国輸出の魅力、それは何といっても市場規模の大きさにあるでしょう。

UNFPAの世界人口白書(State of World Population)2022年度版によれば、中国の人口は約14億4850万人に達したと発表されています。また中国国家統計局の発表によると、2021年のGDP成長率は前年比8.1%、四半期別では第4四半期(2021年10~12月)が4.0%の成長率でした。
(出典:日本貿易機構JETRO ビジネス短信)

経済成長の鈍化傾向は見られるものの、このコロナ禍においてプラス成長を続けている点を鑑みれば、やはり今後も着目すべきマーケットと言えるのではないでしょうか?

中国の国家統計局によると、中国の自動車を除いたB2C市場規模は、2020年で39兆1981億元(約640兆円)にのぼります。EC市場はその4分の1以上を占め、約11兆7600億元(約188兆円)、その成長率はなんと10.9%。中国は文句なしの世界最大のEC市場です。

(出典:深セン市政府ポータルサイト

中国のEC市場は、2000年代前半にアリババグループのECモール「淘宝(Taobao)」が登場したのを皮切りに拡大し始め、2000年代後半に中国のインターネットユーザー数が世界一になり、スマホが普及し始めたのを契機に、2010年代に入って一気に急拡大しました。

中国EC市場における日本の商品は、他国の商品に比べて高い支持を得ています。とは言え、日本の商品の販売金額・数量ともにシェアはまだ低く、伸びしろは大きいため、日本の企業にとってのビジネス機会は多分にあると言えます。中国EC市場の伸びを考えると、今後はいま急速に購買力をつけているミレニアル世代や、さらに若いZ世代をいかに取り込んでいけるかがビジネス成長の鍵を握るでしょう。

人口10億人を超える巨大な中国のマーケットでB2C事業を成功に導くには、特定のターゲットセグメントの顧客像を明確に定義してマーケティングを行うことが大切です。

では中国のB2Cマーケットで狙うべき市場にはどのようなものがあるのでしょうか?サイエストは次の3つのセグメントであると捉えています。

  • ギフト市場
  • シングル市場
  • ライブコマース市場

ギフト市場

メインターゲット層:30代半ば~40代半ば
市場規模:約17兆円(2021年時点)

中国ではビジネスでの昇進やお祝いごとなどの際に、上長や目上の人、親戚などにギフトを送る習慣があります。そうした文化背景が商習慣となって根付き、ギフト市場として一大マーケットを形成しています。
この市場では、消費者の購入目的が贈答用であることから、シーンに合った商品の見せ方やプロデュース次第で、大きく販路を拡げていくことができます。

ギフト市場

シングル市場

メインターゲット層:20代前半~30代前半
市場規模:全人口の15%前後である単身者世帯数 2.4憶人と推定

W11(ダブルイレブン)に代表される、仕事を持つ単身者層を中心とした市場です。
11月11日は「1」が4つ並ぶことからシングルデー(独身の日)と呼ばれ、大規模なセールイベントが行われることは良く知られていますね。約6割が消費意欲の旺盛なホワイトカラーであるこのターゲット層は、実店舗よりもネットショップを活用する傾向があります。典型的なネットショッピング市場といえるでしょう。

シングル市場

ライブコマース市場

メインターゲット層:10代後半~20代半ば
市場規模:30兆円~(2021年時点)

ライブコマースはECとライブ配信を組み合わせた販売手法で、消費者の購買意思決定に強い影響力を持つインフルエンサーと呼ばれる人が、ライブ形式で視聴者に商品を紹介しながら販売するものです。

シングル市場から派生したともいえるライブコマース市場は、1996年以降に生まれたZ世代が中心ターゲットになります。

ライブコマース

Z世代は「抖音(ドウイン / 中国版TikTok)」や「淘宝直播(Taobaoライブ)」などのライブコマースアプリから商品情報を得て、アプリに実装されている℮コマース機能で購入するのが大半です。目新しいものや独創的な商品に高い関心を持つことが特徴として見られます。

京東交際

[抖音(ドウイン / 中国版TikTok)]

ギフト市場

[淘宝直播(Taobaoライブ)]

引用:https://www.douyin.com/
https://taolive.taobao.com/

注目を集める中国の越境EC市場

コロナ感染拡大によるロックダウンの影響を受けて、中国消費者の生活スタイルも大きく様変わりしました。最も顕著に見られた変化は、インターネットによる買い物事情です。
コロナ禍以前よりネットショッピングが主流であった中国ですが、コロナ感染の広がりを受けて、インターネットでの購入依存度は増々高くなってきています。

では、中国の消費者行動には、実際どのような特徴があるのでしょうか?

EC市場では…

日本ではコロナ禍で巣ごもり生活を余儀なくされるようになりましたが、それは中国でも同様です。しかも中国のロックダウンによって長期間を家の中で過ごさなくてはいけない状況は、購買活動の急速なオンライン化をもたらしました。

中国のインターネット利用者数は2020年末時点で約10億人、普及率は70%です。このうち、EC利用者は7億8千万人と、インターネット利用者全体の8割に上ります。まさに世界のEC市場を牽引するのは中国の消費者であると言えます。そして、ほぼ全ての利用者がスマホなどのモバイル機器を使用していることも、中国のEC市場の特徴です。

(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ) 中国EC市場と活用方法

こうしたインターネットとデジタルデバイスの急速な普及が、次にご紹介するOMO(Online-Merge-Offline)やライブコマース の発展の土台となっているのです。

OMO(Online-Merge-Offline)※1

中国では、モバイルオーダーや無人レジ、キャッシュレス決済、チャットボットなどに代表されるOMOによる施策が主流になっており、「完全なオフラインはもはや存在しない」と言われるほどです。

スマートフォンが普及している中国では、現金を持ち歩かずキャッシュレス決済での支払いが普通です。決済時にスマートフォンを使用することで、消費者は手軽にショッピングが楽しめ、企業はいつどこで何が売れたのかといった顧客データを得ることができます。
こうしてオンラインと実店舗の双方から収集された顧客情報を用いて、企業はマーケティングをよりパーソナライズし、一貫した顧客体験を個々の消費者に届けることが可能になります。

このようにOMOの導入によって消費者はより快適な購買体験を得られ、それが購買促進につながるのです。

モバイルオーダー

[モバイルオーダー]

無人レジ

[無人レジ]

チャットボット

[チャットボット]

ライブコマース

中国のコロナ禍での厳しいロックダウンにより、外出して買い物に行くというオフラインの選択肢がなくなったことから、代替手段として急成長しているのがライブコマースです。

中国では、Z世代に支持される商品は他の世代でも人気が出るため、Z世代はB2C市場動向の鍵を握る存在となっています。そのZ世代の間でブームになっているのが、ライブコマースなのです。
Z世代は、SNSや動画サイトなどネットで商品と出会い、その場で購入します。そうした購買行動は他の世代にも徐々に浸透していくでしょう。

それまでライブコマースに注力していなかったECモール・SNSのプラットフォームや企業も、そうした消費者の変化に対応すべく、取り組みを始めています。新しい企業や中小プラットフォームもこの分野に積極的に参入を始めています。
ライブコマースはEC市場の中で、新たなチャネルとして大きな存在感を示しつつあります。

市場規模が大きく、新たな側面を見せながら常に更新を重ねる中国オンラインマーケットで、有効な進出手段と考えられているのが越境ECです。中小企業でも取り組みやすい手段で、海外における販路拡大の事業として選択されるケースが増えています。

しかし、いざ進出となると、どのように参入すればよいのかが課題ですね。

中国EC市場参入のビジネスモデル

中国EC市場への参入手段としては大きく分けて2つあります。

手段1. 越境EC

配送方法の違いから2つのモデルがあります。

保税区モデル
中国政府が指定した保税区内にある保税倉庫にあらかじめ商品を保管しておき、受注後に保税倉庫から出荷、通関・通関の手続きを経て、お客様に配送する方法です。 輸送コストや通関手続きの煩わしさを軽減できる一方で、返品や再販売の不可といったデメリットもあります。
直送モデル
受注後に日本もしくは海外の倉庫から出荷し、通関・検疫を経てお客様に配送する方法です。保税倉庫を利用しないため、在庫リスクは低くなりますが、デメリットとしてリードタイムの長さや行郵税の負担といった面があります。
手段2. 中国国内でのEC販売(一般貿易型)

いわゆる一般貿易型のEC販売です。一般貿易と同様、中国国内の輸入者との間で貿易手続きを行い、中国国内のECサイトで商品を販売します。全て自前でバリューチェーンを構築する必要があるため、自社の意向を反映できる反面、相応の投資と人的リソースの投入が必要となります。

一般貿易ではなく越境ECを活用するメリット

先ほども述べた通り、中国EC市場への参入には、越境ECと従来の一般貿易の2つのアプローチ方法があります。

双方をコスト面、検討リードタイムの観点から勘案すると、比較的低コストで手軽かつスピ―ディーに進められる越境ECの活用がより好ましいと思われます。

一昔前までは自力で翻訳して商品登録を行ったり、発送業務も担ったりと、越境ECにはネックとなっていた部分が多くありました。しかし、今では通信や決済、物流といったインフラが整備され、日本の倉庫から中国の宅配までを一気通貫でECプラットフォームが担ってくれるなど、海外進出の際のハードルも少なからず取り除かれています。環境が整った今こそ、越境ECに取り組むチャンスといえるのではないでしょうか?

中国越境ECのプラットフォームといえば、まず挙げられるのがアリババのB2Cプラットフォームである「天猫国際(Tmall Global)」でしょう。中国最大のプラットフォームで約4分の1のシェアを占めています。企業自らが出店するモデルも提供し、厳しい出店基準から高い信頼を得ているプラットフォームです。 品質にこだわる中間所得者や、トレンドに敏感な30歳以下の若い消費者層に多く利用されています。

次いで高いシェアを誇るのが「考拉海購(コアラ / Kaola)」です。中国各地に保税倉庫を持ち配送の速さが特徴といえます。プラットフォーム内の40%近くが企業が出店する直営モデルで、高い購買力を持つミドルクラスの女性に好まれているプラットフォームです。

そしてシェアこそ天猫国際と考拉海購の半分ほどになりますが、3番手に付けているのが「京東交際(JD Worldwide)」というプラットフォーム。デジタル製品や家電に強く、こちらも配送の速さに定評があります。また正規品保証という品質をうたったサービスで消費者の信頼を勝ち得ています。

いずれも規模の面から、越境ECによる中国進出において検討に値するプラットフォームではありますが、他にもさまざまな中小のプラットフォームがあります。個々のプラットフォームの強みや特徴を事前にしっかりと調査して把握し、自社の商品に最もフィットしたところを選びたいですね。

天猫国際

[天猫国際(Tmall Global)]

考拉海購

[考拉海購(コアラ / Kaola)]

京東交際

[京東交際(JD Worldwide)]

引用:https://www.tmall.com/
https://www.kaola.com/
https://www.jd.hk/

中国越境ECへ挑戦!覚えておきたい重要なこと

越境ECには、少ないコストで手軽に始められるという利点がある一方で、中長期的なビジョンや戦略を持たずに突入すると成果がなかなか上がらないという難しさもあります。越境ECを支えるインフラが発達した今、「商品をどうやって現地まで持っていくか」よりも「商品を現地へ持っていった後、どうやって売るか」、つまりマーケティングと営業の戦略がより重要になっています。

中国越境ECのエキスパートで、サイエストのグローバル顧問としても活躍されている濱一郎氏によると、中国への越境ECを始めるのであれば、中国特有の文化や生活様式を理解することが何よりも大切だそうです。
日本でのやり方そのままで中国で販売しても、異なる行動特性や心理を持つ中国の消費者には響きません。
まずユーザーを深く理解すること、そして、ユーザーと同じ目線に立って丁寧にコミュニケーションをとること、こうしたマーケティングの基本をきちんと押さえた上で、中国向けに戦略を立て直すことが重要なのです。

中国進出支援のプロを活用してみる

そうは言っても、中国のビジネスや消費者行動などについてインターネットで得られる確かな情報には限りがあり、自分の業界や商品カテゴリーにおけるそうした情報となると、そもそもネットでは探せないのが現実。
さらに、例え情報を得られたとしても、それをもとに刻々と変化する中国EC市場向けに戦略を構築し、商品をローンチしていくのはかなり難易度が高いものです。

そんな時こそ、中国越境EC支援のプロフェッショナルの力を借りてみませんか?

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